つまらない毎日だったけれど、あの人に会えるから。
夢、密会
ホント、私の人生って最低。
何の意味も無いと思う。
それでもただ一瞬、生きていたいという気持ちがあるから。
「今日は数学の時間で寝ちゃって・・・(笑)」
私が一番本心で話せる時。
学校では本心なんか見せれない。
ほんの一欠けらでも命とりになる。
そう、昔も経験したのだから。
「あんたなんかに指図される筋合いはないわ。」
毎日を楽しいと感じた教室もそこはたった一言で地獄へと変わる。
女子というのはグループで群れる習性が強く、
逆らたりしたら、すぐ追放される。
そのグループにもよるものだが、
私はそうなった廃人。
孤独を好む人を演じては、影で寂しがる。
本当の私は臆病で、弱いのだから。
ある日、不思議な夢を見た。
知らない人が遠くに立っていて、私の名前を呼ぶ。
最初は遠い距離で、声も小さくしか聞こえない。
でも日増しに距離は近づき、声もはっきりしていく。
「美波。」
目の前の人は今日も私を呼ぶ。
「うん。どうしたの?」
彼には段々慣れて、よく会話するようになった。
でも彼は自分自身については話さない。
私の話を聞きたがるのだ。
「今日も聞かせてよ、美波のこと。」
彼は優しく微笑む。
まるで憎しみや怒りなんて感情が無いのかと思えるぐらい。
そして私は今日あったことを話す。
彼はとても熱心に聞いてくれて、私も話しやすい。
彼と会えるのは限られた時間。
皆は信じないかもしれないけれど、
夢の中だけ。
「買い物に行ったの。」
「うん。」
「面白い本を見つけて、帰ってそればかり読んでたら宿題できなくて。」
「アハハ・・・(笑) ちゃんとやらないと。」
何気ない会話。
でも私にとっては貴重な時間。
何故夢のなかだけなのかって・・・?
それは分からない。彼にも分からないことなのだ。
でもそんなことはどうでもいい。
毎日会って話をするだけで楽しいのだから。
今日も布団に潜っては、彼に会いに行こうと思う。
「緋澄(ひずみ)、こんにちは。」
私が辿りつくと、彼はもう既にその場所にいた。
「こんにちは、美波。」
「今日は勉強してたんでしょ、少し時間が遅いから。」
彼は苦笑いしながら話す。
「うん、ごめんね。テスト前なの。」
そういえば夢の中でも隈はできないのだろうか。
少し違うこと考え、余所見していると彼は目の前から消えていた。
「・・・緋澄?」
黒い影が私を襲う。
そして違う世界に旅立つのだ。
その綺麗な瞳を見つめた瞬間、私は罪を犯してしまった。
「寝てる・・・?」
「うーん・・・・。」
私は待ちくたびれて、いつしか眠ってしまった。
少し低い、心地良い声が聞こえてくる。
「・・・ほんと似てるなぁ、あの人と。」
「レインか・・・・。大地を濡らすものではなく、綺麗な音・・・。」
目を閉じているはずなのに、すこし目の前が暗くなった。
そして唇に柔らかい感触。
少し目を開けると、
目の前には予想にしない人。
漆黒の少しウェーブの美しい髪。
瞳も同じ綺麗な色。そして、男にしては綺麗すぎる顔立ち。
天使みたなキラキラした雰囲気ではない。
どっちかというと悪魔が似合いそうな麗しさ。
私はすぐ目を閉じて寝ている振りをした。
そうしなければ。
今起こったことは、問い詰めるなんてできないのだから。
「・・・・おやすみ。」
扉が静かに閉じる音が聞こえ私は飛び起きた。
なんたって、ファーストキスが奪われたのだから。
「何で・・・!?」
きっといたずらなんだ、とそう思うことにした。
「おはよう、麗音(レイン)」
振り返ると、安心できる笑顔。
彼は私の従兄弟。家も近くて、昔からの付き合い。
兄代わりでもあったりする。
「おはよう。」
あまりよく眠れなかったことは秘密。
顔に出やすいので、気をつけないと。
「どうだった、お兄さんは。」
優しそうな顔をしていても彼ははっきり言うんだと改めて実感した。
「うん、私が寝てしまってて。まだ話していないの。」
そう、あの綺麗な人は昨日兄として顔をあわせた。
腹違いなのだから当然似てるはずもなく。
校門付近でたっているとすぐ人だかりができてしまう。
なんて声かければいいか分からない。
とりあえず、見えなかった振りが一番有効な気がした。
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「あいつはホント、ためらいなくやるんだな。」
「心がないのか、サイボーグとか。」
「あそこまでいっちゃ人間じゃないよ。」
嗚呼・・・。一応痛む心は持ってるつもりなんだけど。
ってか話し声が聞こえてるよ?
「おはよう。」
そう言い綺麗な人は通り過ぎる。
「げ、さっきの聞こえてたんじゃないか・・・。」と小声で言う者もいる。
でもそんな言葉も気にしない。
今日も外は雨降り。
何も聴かれないですむから自分にとっては有難い天気。
「こう雨も続くと、折角綺麗な花が根腐れしちゃうかもね・・・・。」
自分に綺麗だとか感じる心があるのにも驚いた。
そうやって人がいない廊下をわたっていると急に頭痛が発症。
いつものことだ、あまり気にしない。
でも一応じっと一箇所に留まることにした。
「あれ・・・?ディトじゃない。」
聞き覚えのある優しい声。後ろから響く。
「あぁ、櫻。少し休んでいるんだ。」
何も問題ない顔に切り替えて言う僕。詐欺師に向いてるかもね。
櫻は少し疑うような目で僕を見る。
女の感というものはやはり鋭い。
「またなの?薬渡すからついて来て。」
やはり見抜かれていたようだ。
「うーん。ベットで押し倒されてもいいの?(笑)」
冗談で誤魔化しとおす僕は卑怯者。
それでも櫻は優しくしてくれるのに、分かってて言うひねくれ者。
「ふーん。貴方みたいな美形ならいいわよ?」
やはり彼女もひねくれ者だった。
そう冗談を言いながら医務室についた。
彼女は薬の棚で作業をしている。彼女はこの施設の専属医なのだ。
そしてとても美人で、僕同様に変わった性格を持ち合わせている。
その作業を僕はじーっと見つめる。
そして作業が終わったモノを受け取り部屋を出る。
「・・・うっ!!」
いつでも油断してはならない。
このような輩がいるのだから。同じ組織にいても安心できないのだ。
そうやって僕の一日が始まる。
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